清潔好きな日本人
コロナウィルスによって日本でもたくさんの方が罹患し、命を落とされました。しかし、欧米に比べ、厳しい対策をとったはいえない日本にコロナウィルスの感染患者が少なかったのはどうしてなのでしょうか。
医学的な見地はわかりませんが、私個人としては、日本人が古来から持つ「清潔主義」がその根底にあると思っています。日本人はもともと、清潔好きな民族なのです。家に入るときは靴を脱ぎ、丁寧に手を洗うことが当たり前です。体を清めるお風呂は、シャワーだけで済ませることなく、湯船に入ります。
江戸時代後期、江戸に住む人は武家50万人、町人50万人が住む100万人を超える世界一の大都市として発展を遂げていました。各家にはトイレがあり糞尿の汲み取り式で汚水を処理するステムの整備がなされ、下水として流すことはしませんでした。糞尿を汚物ではなく農家の貴重な肥料として考え、お金や野菜と交換していたのです。また、きれいな飲み水の確保にもつとめ神田上水や玉川上水が引かれました。その頃のヨーロッパでは、糞尿は下水や側溝に流し、路上に垂れ流すのが常識とされていたのです。
イギリス人外交官・オールコックは、幕末に日本を訪れ「よく手入れされた街路は、あちこちに乞食がいることをのぞけば、きわめて清潔であって、汚物が積み重ねられて通行をさまたげるというようなことはない」「これはわたしがかつて訪れたアジア各地やヨーロッパの多くの都市と、不思議ではあるが気持ちのよい対照をなしている」(『大君の都 幕末日本滞在記』オールコック著)と感想を述べています。
日本は、江戸時代にはインフラが整備された世界一の「清潔都市」であったのです。これには、神道思想の「清潔主義」という生き方が大きく関係しているのです。
その清潔主義は神道にも表れています。神社に参拝の際は、手水といって水で手と口を清めます。手水は、全身を水で清める禊を簡略化したもので、浄水にて手を洗い、口を漱いで汚ればかりでなく、罪穢れを流し、心身を清浄にする作法です。