生きることは息すること
日本人は、「生きる」ということは、「息をする」ことであり、“息する”ことは、すなわち“生きる”ことだと捉えてきました。
神道では、この世への誕生を産土神様から命をいただくことと考えます。赤ちゃんが産まれた時の第一声を「産声」といいますが、その息は息吹(いぶき)です。山蔭神道第79代宗家の山蔭基央氏は、産声を「おお神よ!この世に生まれたぞ!」という勝どきの声であると述べています。そして、生みの親から息を受け継ぐ存在を「息子」「息女」「ご子息」「ご令息」と言ったりします。
また、古代やまと言葉では、「し」は「息」「風」を意味していました。(『岩波古語辞典』)古代の日本では、息がとまることが「死」であったのです。死ぬときは「息を引き取る」「息絶えた」ともいい、生き返ったときには「息を吹き返した」いいます。人は母の胎内から誕生し、最初の息でこの世へ第一歩を踏み出すのとちょうど対称に、最期の息で次の世界、あの世へと旅立っていくのです。